理想と妄想のジャンクション

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【アメコミ】持っておく価値がある一冊

 「シルバーサーファー:パラブル」です。

 ここ数年、月に数冊ペースでマーベルやDCのヒーロー物アメコミは邦訳されていますが、最近(昨年12月)に出版されたにも関わらず、原書自体は1978年と、ちょっと古典に類するものです。

 いつか買おうと思いながら、これまで購入を躊躇っていた理由は、アメコミが他にも色々出版されているせいで、なかなかお金が…という現実的な問題でした。

 あと、実は一度邦訳されていて、それを持っているというのもありました。

 ただ、以前の邦訳は「マーヴルクロス」という雑誌形式の書籍に掲載されたもので、前後編に分けてのものでした。それが今回、ハードカバーで1冊にまとまっているので、マニア心は刺激され続けていたのです。

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 これは、アメコミ好きのみならず、マンガ好きの心に響く一冊である事は間違いありません。

 何せ、アーティストはあのバンド・デシネ(フランスのコミック)の大家メビウス(ジャン・ジロー)なのです。大友克洋宮崎駿にも影響を与え、手塚治虫と交流もあったという、マンガ史を語る上では避けて通れない…でも、日本では作品を読む機会がなかなかない人です。(なお故人)

 そんなメビウスが、これまたマンガの歴史を語る上では避けて通れない、アメコミの巨匠スタン・リーと組んで描いた唯一のマーベルコミックが、この「シルバーサーファー:パラブル」なのです。

 ちょっとマニア気取りたい私なんかのようなオヤジとしては、是非とも押さえておきたい一冊です。

 正直、私もメビウスについてはそれほど知識もないのですが、とりあえず所持しているというのが、マニア気取るには重要です。シルバーサーファーという、キャラクターのチョイスも絶妙です。メビウスの得意とするSF的な要素や、ギャラクタスという、コミック発祥の神話性も、語り甲斐があります。

 と、かなり不純な動機で購入しているような気がしますが^_^;

 しかし、今「シルバーサーファー:パラブル」を改めて読んでみて、アートに古臭さは感じません。おそらく日本のマンガとは違った、バンド・デシネなりのコミックアートへのアプローチがあったのだと思います。繊細に描き込まれた街並を飛翔する、彫像のようなシルバーサーファーの姿は、美しさすら感じます。

 日本のマンガ好きな人は、意外と海外コミックを知らないまま、日本のマンガは世界最高だとか思いがちですが、一度は海外のコミックを読んで、海外ならではのコミックの技法を見てみるのもいいと思います。

 実は、全体で見ると、世界中の漫画家はどこかで互いに影響し合っているものです。その国ならではの文化に根ざした、コミックの違いはあっても、優劣はないと感じられるかもしれません。

 

 内容については、通常のマーベルユニバースとは別の世界の物語という事で、シルバーサーファーとギャラクタス以外のマーベルキャラクターは出てきません。FFすら存在しない世界です。

 とはいえ、FFのギャラクタス襲来エピソードに類する事件が過去にあったという前提で話が進められますので、知識が全くないとしんどい作品ではありますが^_^;