理想と妄想のジャンクション

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 ※ネタバレあります

 そんなわけで久々にアメコミの感想。

 「ドゥームズデイクロック」をようやく読んだので。

 かの名作「ウォッチメン」の正統続編であり、DCユニバースとのクロスオーバー作品でもある。バットマンやスーパーマン、ジョーカー、レックス・ルーサーなどをはじめとして、DCの有名キャラクターが大挙して出演している。

 多くのキャラクターが絡み合って、最初にいくつも「ひっかかる」部分を準備した上で、読み進めるにつれ謎が少しずつ明らかになっていく様は、確かに「ウォッチメン」と似た読書感で、正統続編に相応しいと思う。
 分量もかなりのもので、読み終えた時の満腹感も凄い…のだけれど…

 基本的に物語の発端が、オジマンディアスの「計画に邪魔だったからDr.マンハッタン排除したけど、計画が破綻したからDr.マンハッタン連れ戻して何とかしてもらおう」というのが何とも…
 本当に世界で一番頭がいいのこの人?
 「ウォッチメン」での計画は「あくまでもコミックだから」と思って飲み込んだけれど(ハリウッドは飲み込めなかったようで、映画版では改変されてた)、さすがに2度目は苦しい…プランBとしては、あまりにも適当すぎる。…まぁ、これじゃないと話が始まらなかったとは思うけどさぁ。
 バットマンの行動もなかなか頭が固くて、読んでいて釈然としない…頭のいい人が急に頭の悪い事をやり始めるのは、クロスオーバーあるあるだけど…というかそもそもDCユニバースとウォッチメン世界とのつながりを描いた「ザ・ボタン」が全然伏線として機能しておらず、後半に入るまでバットマンが全然状況を把握していない。
 というか、フラッシュはどこ行ったの?
 ウォッチメン世界との繋がりを見せた「ザ・ボタン」では、物語に大きく絡んできそうな立ち位置だったのに、全く出てこない。フラッシュ本編で語られたサブストーリーがあったのかもしれないけれど、「ドゥームズデイクロック」を読んだだけでは投げっぱなしに見えて納得できない。
 ロールシャッハについても不満が残る。
 …彼がロールシャッハである必然性、あった?
 それこそメタ的なところにしか理由が無いような気がする。読者は確かにロールシャッハを見たい。それは確かだけど、ロールシャッハらしさの足りない2代目でいいかというと、それは違う。
 今回のロールシャッハの設定は、どちらかというと、バットウィングやハントレスのようなバットマンファミリーの新キャラのようだ。

 人気キャラクターのロールシャッハを復活させたいという、宇宙の意思なのだろうけど、もっとやりようはなかったのかなあ?

 

 物語の核は、Dr.マンハッタンが知ることになる真実で、我々が読んでいるコミックブックの世界の真実そのもの。この解釈を成立させたのはかなり斬新だと思う。
 時代によって、ただ一つの「世界の核」は形を変えるのだけれど、変わらない部分もある。そのことに意味がある事をDr.マンハッタンは知り、我々読者も再認識する。

 よくあるメタ視点の物語ではよく、作り物の世界を無価値と捉えたり、作り手や受け手の意思を敵視したり茶化したりするのだが、それとは全く違う。

 「今後、どのような変化があっても『スーパーマン』を起点としてDCユニバースは広がっていく」という事の意味を物語世界の中でも明らかにした。それは、我々『読者』が誰でも知っているものだが、物語世界/DCユニバース内においても、同じ価値を持って世界に影響を与えていた事が、世界を俯瞰するDr.マンハッタンの視点で確認された。
 DCユニバースは、第4の壁を飛び越えるのではなく、第4の壁の先と価値観を共有した。

 …凄いと思うのだけど…
 上に挙げたようなところが気になりすぎて、素直な感動を邪魔している感じは何だろう…

 微妙に、素直に感動できないこの感覚は何だろう…

 気になるので、もう1回読んでみるか…